切開を伴わない包茎治療には、器具を用いて包皮口を徐々に拡張するストレッチ法、ヒアルロン酸やコラーゲンを注入して包皮輪を広げる充填療法、包皮を根元側へ糸で固定して余剰皮膚を内部にたくし込む埋没法などがございます。最大の利点は「メスを入れない」ことにより出血・縫合が不要で、翌日から入浴やデスクワークが可能というダウンタイムの短さです。また費用も外科的切除より低めに設定されることが多く、治療への心理的ハードルが下がる点も見逃せません。しかし牽引器具は一日数時間を数か月継続しなければ効果が得られにくく、途中で装着を怠ると再包茎率が高いという課題があります。注入療法は即時に開口径が広がりますが、充填剤が半年〜1年で吸収されると効果が減弱し、追加注入が必要になるケースが少なくありません。さらに異物反応による硬結・感染・血管塞栓のリスクも報告されております。糸による埋没法は手技が10分程度と短時間で腫れも軽い反面、糸の圧迫で皮膚が陥没したり伸び戻りで再発したりする審美的問題が生じる可能性がございます。いずれの方法も真性包茎やカントン包茎など包皮口が極端に狭い症例には適応外となり、結果として外科的切除が必要になることもございます。切らない治療は麻酔も局所麻酔クリームで済むことが多く恐怖感が少ない一方、効果が永続的かどうかというエビデンスが乏しく、長期追跡データでは三年以内に再治療が必要となった例が三割前後とされております。治療を始める前に、①毎日続けられるか、②効果が薄い場合は手術へ移行する覚悟があるか、③費用総額が分割注入などでかえって高くならないか、を必ずご確認ください。また海外製の器具や個人輸入の注入剤を自己判断で使用すると、皮膚壊死や敗血症など重篤な合併症を招く恐れがあり大変危険です。経験豊富な泌尿器科専門医の診察を受け、リスクとベネフィットを比較したうえで治療方針を決定なさることを強く推奨いたします。