包茎を放置したまま性生活を営みますと、衛生環境の悪化が性感染症(STI)の発症・伝播リスクを高めることが多くの臨床報告で示されております。包皮内部は湿度が高く温かいため恥垢や汗、尿の残渣が蓄積しやすく、細菌・真菌・ウイルスが増殖する温床となり得ます。特にクラミジア、淋菌、カンジダ、トリコモナス、単純ヘルペス、ヒトパピローマウイルス(HPV)などは湿潤環境を好み、亀頭や包皮に微小な裂傷があると容易に感染が成立いたします。仮性包茎の方でも包皮を完全に反転させて洗浄・乾燥する習慣が不十分な場合には同様のリスクが生じます。また包皮口が狭い真性包茎やカントン包茎ではコンドームの正しい装着が難しく、物理的なバリアが不完全となることでパートナーへの感染伝播率が上昇する点にもご注意ください。さらに慢性的な包皮炎が持続しますと上皮細胞のバリア機能が低下し、ウイルス受容体の発現が増加することでHPVの持続感染を招きやすくなり、結果として陰茎がんや子宮頸がんのリスクに間接的に寄与する可能性が指摘されております。性感染症は一度罹患すると再発を繰り返すものや、不妊症の原因となるもの、免疫力が低下した際に重症化するものもございますので、包茎の方は特に予防的対策が重要です。セルフケアとしては入浴時に包皮を優しく反転させ、低刺激性の洗浄剤で亀頭と包皮内板を丁寧に洗い、流水で十分にすすいだ後、清潔なタオルで水分を除去し完全に乾燥させることが基本となります。性交渉の際はサイズに合ったコンドームを使用し、挿入前にしっかりと空気を抜いて根元まで密着させ、行為後は速やかに取り外してから再度洗浄を行ってください。もし包皮の腫れや発赤、分泌物、悪臭、痛み、かゆみなど異常を感じた場合は、自己判断で市販薬を塗布する前に泌尿器科または皮膚科を受診し、適切な検査と治療をお受けになることを推奨いたします。なお真性包茎やカントン包茎で衛生管理が困難な方、繰り返す包皮炎や性感染症でお悩みの方には環状切除術や包皮形成術といった外科的治療により清潔性を根本的に改善できる可能性がございますので、医師とご相談ください。パートナーとご自身の健康を守るためにも、包茎と衛生状態の関係を正しく理解し、早期の対策を心掛けていただければ幸いです。