包茎と陰茎がんの関係性についての基礎知識

陰茎がんは国内での年間発症率が10万人あたり0.4例前後と稀ながんですが、患者の約半数に包茎—特に真性包茎—が背景因子として認められています。包茎では包皮と亀頭が常時密着し高温多湿となるため、恥垢や尿成分が停滞して嫌気性菌が繁殖し、慢性炎症が持続しやすい環境が形成されます。炎症に伴う活性酸素は上皮細胞のDNAを損傷させ、さらに高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)16・18型の持続感染が加わることで発がん過程が加速すると考えられます。疫学研究では包茎男性の陰茎がんリスクは非包茎の3〜4倍に上昇し、真性包茎やカントン包茎では包皮口が狭く病変を視認しづらいため、腫瘤や潰瘍が見つかった時点で進行している例も少なくありません。初期病変は痛みのない白色角化斑や紅斑として現れやすく、セルフチェックを怠ると見逃しがちです。一次予防として確実なのは環状切除術などによる包茎手術で、慢性炎症の温床である包皮を除去することで発症率が有意に低下することがメタ解析で示されています。加えて男性へのHPVワクチン接種は高リスク型感染を抑制し、自身のみならずパートナーの子宮頸がん予防にも寄与します。喫煙、糖尿病、慢性包皮炎はリスクをさらに上乗せするため、禁煙と血糖コントロール、毎日の洗浄と乾燥を徹底してください。予防と併せて早期発見も重要です。入浴時に包皮を反転させ色調や形状の変化、接触出血の有無を確認し、40歳を過ぎたら年1回泌尿器科健診で視診と超音波検査を受けましょう。疑わしい病変があれば局所麻酔下でパンチ生検を行い、上皮内がんの段階で切除すれば機能温存が可能です。進行がんでは部分切除や全切除、鼠径リンパ節郭清、化学放射線療法など治療負担が大きくなるため、包茎を放置せず早期に介入することが長期的な健康維持の鍵となります。包茎を単なる見た目の問題と捉えず、陰茎がんという重篤なリスクと結び付けて理解し、衛生管理・ワクチン・手術を組み合わせてご自身とパートナーの将来を守りましょう。

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