包茎とEDは、一見まったく別の悩みに思えますが、臨床現場ではしばしば併存が報告されています。包茎は「亀頭が包皮で覆われた状態」を指し、真性・仮性・カントンの3タイプに分類されます。一方、EDは「十分な勃起が得られない、もしくは維持できない」状態の総称です。では両者はどのように関連するのでしょうか。第一に挙げられるのが「心理的ストレス」です。包茎による見た目のコンプレックスや不衛生への不安は、性交時の自信を奪い、交感神経優位を招いて勃起を阻害します。ある調査では、包茎男性の約3割が性行為時に「勃起が不十分」と感じた経験を持つと報告されています。第二に「炎症・痛み」があります。包茎では恥垢が溜まりやすく、慢性包皮炎を招くことがあります。亀頭部の痛みや腫脹は性的嫌悪感を強め、勃起反射を抑制します。さらに、慢性炎症が長期化すると血管内皮機能が低下し、海綿体への血流が減少する可能性も指摘されています。第三に「血流障害」。カントン包茎では包皮輪が狭く、勃起時に陰茎根部が絞扼されることで静脈還流が妨げられ、痛みを伴うストラングレーションが起こります。痛みが続くと勃起そのものを避ける行動が習慣化し、結果として勃起不全が固定化するリスクがあります。包茎が原因のEDは「機能性ED」に分類されることが多く、包茎手術や適切な衛生管理によって改善が期待できます。環状切除術を受けた患者の約7割が「勃起の質が向上した」と回答した報告もあります※。ただし、糖尿病や高血圧など器質的要因が背景にある場合は、手術のみで十分な改善が得られないケースもあります。セルフケアとしては、入浴時に包皮を優しく反転し洗浄・乾燥させること、性交時の恐怖心を和らげるためにパートナーとのコミュニケーションを図ることが推奨されます。それでも症状が続く場合は、泌尿器科での包茎治療と同時にED治療薬(PDE5阻害薬)の併用を検討します。まとめると、包茎は心理的・炎症性・血行動態的にEDを誘発・悪化させる要因となり得ます。包茎を放置しても必ずEDになるわけではありませんが、二つの悩みが重なったときは早期に医師へ相談することで、性的健康とQOL(生活の質)の改善につながります。